松江商業高等学校のホームページにお越しいただき、ありがとうございます。校長の西村隆正と申します。松江商業高校に赴任して2年目となります。どうぞよろしくお願いします。
 本校は明治33年(西暦1900年)、県民の殖産振興の熱い期待の中、山陰に先駆け全国32番目の商業高校、校名「島根県商業学校」として市内殿町に開校されました。爾来、時代の変遷に伴い、社会の要請に応えながら、幾度かの校名改称、統合・分離独立、校舎移転、学科改編等、様々な局面を乗り越え、今日に至っております。
 昨年度、創立120周年の節目を迎えることができました。今春の卒業生を加えると、卒業生は二万五千人を超え、これまでに、地元経済産業界をはじめとして、各界各層に優秀な人材を輩出し、名実ともに島根県商業教育の中核を担う伝統校として発展を遂げてまいりました。
 これもひとえに、本校教育活動を支えていただきました島根県並びに島根県教育委員会、松江市、地元産業界の皆様、後輩に惜しみないご援助を頂きました振商会並びに一般財団法人振商会、そして、卒業生の皆様、温かい目で見守って頂きました地域の皆様、本校教育活動にご理解・ご協力をいただきました保護者の皆様、本校の発展にご尽力された歴代校長を中心とする旧教職員、それぞれの皆様方のご支援の賜であると、深く感謝申し上げます。
 さて、昨年来、新型コロナウイルス感染症は衰えることを知らず、今また、第4波が押し寄せようとしています。昨年来、感染拡大防止のため、様々な行動が自粛・制限されながらも、少しずつ日常生活が取り戻され、学校においても徐々に通常の教育活動が再開できるようになりました。
 今の段階で、今回のコロナ禍の功罪について論じるのは時期尚早かもしれませんが、新たな気づきや学びも少なからずあるように感じております。もちろん「罪」のほうが圧倒的に多く、健康被害や経済的困窮だけでなく、夢の中断や挫折など、今までの努力が一蹴されてしまったり、価値観が一変したりもしました。その中で敢えて「功」を挙げるとするならば、当たり前の生活を過ごせることの有り難さ、家族の絆や仲間の存在の大切さに気づくことができたこと、また、今までの人生の振り返りと新たな決意の機会を得たことなどが挙げられると思います。
 「新しい日常」という言葉が使われ始めました。「withコロナ」とも表現され、未だ正体の知れないウイルスとの共存を前提とした生活様式の構築が求められています。正に「不易と流行」です。江戸時代の俳人、松尾芭蕉は「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」と言っています。即ち、「不易」といういつの時代にも変わらず軸となるものの上に、「流行」という進取の気風を積極的に取り込むことが大切だということです。
 本校教育の「不易」である校訓は、明治40年に「誠実・質素・勤勉」が定められ、その精神は明治41年に作られた校歌にも歌い込まれています。校訓と校歌は振商会会員や在校生の心の拠り所であり、時代は明治から、大正、昭和、そして、平成、令和へと変わりましたが、校訓・校歌とも今日まで変わることなく受け継がれています。
 しかしながら、伝統は古きものを守っていくだけでは築き上げることができません。生徒の皆さんは、これからの混沌としたグローバル社会、少子高齢化社会、AIの台頭による情報化社会の中で、自らに問いかけ、答えを見つけていかなければなりません。この歴史と伝統のある松江商業高等学校に集った友と切磋琢磨し、自らの力を磨き、互いを高め合うことにより、松江商業高等学校に新たな風を吹かせてほしいと願っています。
 私たち生徒・教職員は、諸先輩方が連綿と築いてこられた輝かしい歴史とよき伝統・校風を受け継いでいくとともに、なお一層、地域の期待と時代の要請に応えるべく、一丸となって、松江商業高等学校の新たな歴史を刻み、夢と活力あふれる学校づくりに邁進していく所存でございます。今後ともよろしくお願いいたします。

島根県立松江商業高等学校  
第38代校長 西村 隆正