令和5年度の新学期が始まりました。昨年はリモートによる始業式でしたが、今年は体育館で一堂に会することができました。入学式も無事に終わり学校も賑やかになってきました。今年の新入生は、新型コロナウィルスが猛威を振るう真っ只中で中学校生活を送ってきました。数々の制約の中で、勉強への不安や学校行事の楽しみも半減していたのではないかと思います。私たち高校でも昨年は臨時休業や行事の縮小や延期などで我慢して耐える日々が何度もありました。当たり前にできていたことが実は当たり前ではなかったのだということを何度も思いました。しかし逆に、むしろ新入生の皆さんはマスク生活や黙食が日常生活だったのかと思うと三年間という月日の大きさを感じます。しかし、もう、今年はコロナに向き合って4年目になります。感染症対策は油断なくしっかりとやらなければなりませんが、世の中も次第に動き出してきました。やがてコロナが5類になり落ち着くにつれて、部活動も授業や検定・資格取得にも時間を確保して打ち込むことが出来るようになるでしょう。また、課題研究や学校行事などもこれまで以上に地域社会の人たちと触れ合うことが多くなってくるでしょう。それだけ新しい発見や出会いもあり、チャンスも広がってくると思います。ぜひ高校生活で努力が報われる充実感や達成感を味わってほしいと思います。
 おそらく世の中も変わっていきます。私たちはコロナ禍の影響下で、ICT機器の普及やリモート会議、テレワーク等々の工夫で生活を維持してきました。しかし今や便利さの反面、やはり対面の方が良く伝わるという反省も出てきています。さらに現代の社会は、ここ十数年間、AI(人工知能)、SDGs(持続可能な開発目標)、カーボン・ニュートラル(脱炭素)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、Society5.0等々の新語が示すように、大きな変革期にあり予測不可能な社会です。しかし、今やそれさえ本当にこれでいいのか検証すべき時に来ているのではないかとまで思います。
 先日、ふと次のような言葉を思い出しました。とても有名な四字熟語で中学校の教科書にも載っている言葉です。それは「温故知新」と言う言葉です。漢文で読み下すと「故きを温ねて、新しきを知る」となります。意味は「昔から伝わっているものをよく学んで理解し、新しい知識や知恵を得ること」です。元は論語という書物にある言葉ですが、この後にはさらに続く言葉があります。「故きを温ねて、新しきを知れば、以て師たるべし」「師」というのは「先生」のことで、「人の師(先生)になる資格がある」という文脈です。少し拡大して解釈すると「新しい時代の先達・リーダー、開拓者・パイオニアになることが出来る」と読み替えてもいいでしょう。つまり、こういう時代の変わり目に生きるためには、昔のことをよく知っているだけでは足りないのです。新しいものばかり追い求めても足りないのです。「伝統をいかに継承するか」ということと、「未来をいかに創造するか」ということの二つの視点を持って考える必要があると思います。少し大きなことを言いましたが、大きな志を持つと周りの広い世界が見えてきます。そして、小さな努力を積み重ねていくことの大切さにも気づきます。大きな志をもって小さな努力を着実に積み重ねると良いと思います。今年度は以上のことを意識して進んでいきたいと思っていますのでよろしくお願い致します。